貧血について
2023.06.04
貧血の治療薬について、院内で勉強会をしました。
婦人科の疾患で、過多月経(生理の量が多い)や子宮筋腫の方は
慢性的な鉄欠乏性貧血を生じやすい傾向にあります。
血液中の酸素を運搬するヘモグロビン値が低下して貧血になることで、
ふらつきや倦怠感の原因となります。
鉄欠乏性貧血の原因としては
・鉄が失われて貧血になる(生理、出血など)
・鉄の利用増加(成長期思春期、妊娠中など)
・鉄の摂取量・吸収量が不足(胃切除後、拒食、腎不全など)
の3つに大きく分類されます。
過多月経では婦人科的治療を行いつつ、平行して貧血治療にも対応します。
一般的な貧血の治療薬には、クエン酸第一鉄(フェロミア錠®)があります。
1錠数円と安価でよい薬です。
しかし鉄剤は気分が悪くなって飲めないという患者さんもいらっしゃいます。
その場合、次の手としてリオナ錠®という鉄欠乏性貧血治療薬があります。
もともとは慢性腎臓病の高リン血症治療薬(クエン酸第二鉄水和物)ですが、
鉄剤にありがちな悪心・消化器症状が出にくい薬剤です。
1日1回2錠内服することで、フェロミア錠と同等の貧血改善効果が得られます。
薬価は1錠74円(1日2錠:3割負担で44円/日)とフェロミアに比べ少し高価です。
鉄剤が飲めずに市販のサプリメントで対応していた方にはよい適応かと思います。
それでもやっぱり内服はムリ!という貧血の方には、注射製剤を用います。
フェジンという注射を連日で投与してますが、1回のみでは効果が限定的です。
何度も病院に来て、都度注射をする必要がありました。
貧血がひどいけど鉄剤内服ムリ! できれば注射回数も少なめ!で済ませたい方に。
2020年にフェインジェクト、2023年3月にモノヴァーという点滴薬が登場しています。
糖鎖にくるまれた鉄が細胞に取り込まれたのちに、ゆっくり分離し鉄補給されます。
そのため1、2回の点滴で高用量の鉄を補給可能となり長期間貧血が改善されます。
慢性腎不全に伴う「腎性貧血」や、免疫の異常などで生じる「溶血性貧血」、
骨髄機能異常の「再生不良性貧血」等では鉄補給で改善しないことがあります。
長く続く貧血の場合、鉄不足以外の原因を疑う必要があります。
貧血のような症状が続く場合は、一度検査を受けてみることをお勧めします。